日本企業がサムスンに勝てない理由
その1.止まらない技術者の流出
サムスン製品はNTTドコモが販売するスマートフォンGalaxyS以外日本市場ではほとんど存在感がない。欧米アジアで絶好調の液晶TVも冷蔵庫も洗濯機も売っていない、しかしなぜか研究所が横浜にある。日本サムスン横浜研究所である。
その目的は日本メーカーから技術者をヘッドハントしてサムスン製品の技術開発研究をすることである。サムスンがこの横浜に研究所を構えた理由は立地である。
なぜなら、日本の主要電機メーカの多くが神奈川県に研究所を置いているからだ。例えば、
・富士通は厚木
・NECは相模原(中央研究所はお隣りの東京都港区田町)
・パナソニックは本社R&D部門首都圏地区が横浜に
(その他全ては門真市にあるが、サムスンも大阪に分室を置いている)
・東芝は生産技術研究所が横浜、研究開発センターが川崎にある
半導体研究所も川崎であり、東芝の技術者が主要ターゲットだと思われる。
横浜であれば、これら研究所に勤務する大手メーカーの技術者へのアクセスは容易であり、引き抜きを行う際の日本人技術者の負担も少なくなり、転職の際の障害を減らすことができる。
引き抜きを前提にして研究所を設置するメーカーは世界にもそう無いのではないだろうか。
下の記事は福岡での研究開発拠点新設のニュースである。記事にもあるが、日本企業の研究開発エンジニアのスカウトが前提のものとなっている。
西日本新聞1月29日
半導体・家電メーカーとして世界最大級の韓国サムスン電子は、
福岡市・天神に最先端半導体の研究開発拠点を2月初めに開設する。
26日、複数の関係者が明らかにした。開発陣は10人程度でスタートし、
段階的に50人規模に増やす方針。九州に半導体・電気機械企業が集積している点に注目し、
優秀な技術系の人材獲得や納入先開拓が目的とみられる。
九州には東芝など半導体大手や、組み立てを担当する地場企業が多い。
金融危機後の不況で、九州でも事業縮小や撤退が相次いでいることから、
技術力に定評のある日本の開発陣をスカウトする好機と判断したもようだ。
このため、開発陣の大半は日本人を採用する方針。
福岡市は、誘致企業として同社への家賃助成などを検討する。
サムスン電子は1990年代、半導体分野で積極的な設備投資や研究開発投資を行い、日本勢を抜いた。
日本では92年から、半導体のほか画像処理、光学技術などの研究開発を進めている。
日本企業が新卒の理系学生を採用して、一人前の技術者に育てる。そして経験を積み、脂の乗った頃に高額な報酬でヘッドハントする。日本企業はまさに育成コストだけを負担する育て損。美味しい果実はサムスンが頂いている状況だ。
更にサムスンは45歳定年制であるから、使いふるしの技術者は用済みとなり、放り出される。常に日本企業から若く、かつ最先端技術を持つ技術者が補充され続けるため、R&D部門の効率は他の電機メーカーとは比べものにならないぐらい良いはずである。
技術流出に関しては、90年以前はサムスンやLGなどの韓国企業は日本人技術者を週末に韓国に呼び寄せていたのだが、危機感を持った日本企業が技術者の週末韓国アルバイトを禁止すると、大胆にも日本企業の研究所地帯に研究所を設置。そこで引き抜きと研究開発を行い始めた。詳細はこちらのブログを御覧頂きたいhttp://noppin.seesaa.net/article/173827313.html)
サムスン横浜研究所が採用を積極的に行なっているエンジニアの職種にも注目されたい。多くが、日本企業が世界市場で大きなシェアを持っている製品や日本企業が技術的に先行している製品に重点をおいているのだ。リチウムイオン電池では猛追され、シェア逆転間近。その次は間違いなくプリンタであろう。
技術者をゼロから育てなければならない日本企業。育て上がった技術者を一番美味しい時期に引き抜き採用する韓国企業。育成コスト負担無く、最新の技術を即時投入できるのだがら、残りはデザインとマーケティングに集中できる。サムスンが強いのも当然といえよう。
日本企業がこの悪夢の引き抜き攻撃から逃れるには、優秀な技術者に対してサムスン以上の報酬を継続的に与えることであろうが、果たして可能だろうか。。。
その2.韓国政府と米国投資家による徹底支援
いつも2chの議論で抜けているのだが、サムスンのオーナーの半分以上は韓国人ではない。
下記はサムスン電子の投資家向け情報である。この情報がすべてを語っている。
■サムスンの株式構成(2010年6月時点)
一般株86.6%
優先株13.4%
■株主構成における外国人投資家の割合
株式全体では53%
・一般株では49%
・優先株では81%
※(優先株式(ゆうせんかぶしき)とは、利益もしくは利息の配当または残余財産の分配およびそれらの両方を、他の種類の株式よりも優先的に受け取ることができる地位が与えられた株式である)
■5%以上を保有する大株主
1. シティバンクN.A(米国)(7.25%)
2. サムスン生命保険(韓国)(6.5%)
簡単にまとめれば、半分以上の株式と配当利益を外国人(主にアメリカ人)が得ている状況である。
最近も村田製作所がアメリカにおける対サムスン特許侵害訴訟で負けてしまった。アメリカにおける日本企業対サムスンの特許侵害訴訟はほどんど和解ばかりである。
残念ながらサムスンの利益の半分以上をアメリカ人が得ており、半韓半米企業である限りアメリカで特許裁判などで日本企業が勝つことはかなり難しいのではないのだろうか。
日本企業は個々の企業がバラバラであり、政府の支援も無いに等しい。この状況で勝てという方が厳しだろう。さらにサムスンは米国の有名大学卒業者の採用に非常に積極的だ。卒業生の高い能力よりも、その卒業生ネットワークに期待しているとこが大きいだろう。やがて大企業幹部や政府高官となる卒業生のネットワークはグローバル競争では非常に重要だ。
日本企業はその点でも大きく出遅れている。パナソニックなどは最近になって留学生大量採用など初めているが、外国人学生はそれぞれの母国で強力なコネを持てるような人材に絞ったほうが良いのではないだろうか。
今後もサムスンは引き続き強力な存在感を持ち続けるだろう。
つづく。
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